これはBathで泊まったB&B
そのB&Bはオックスフォードのバスターミナルから離れた郊外にあった。バスターミナルを出ると3、4台のタクシーが並んでおり、運転手たちはタクシーにもたれかけながら暇そうに煙草をふかしていた。先頭の運転手に行き先を伝え、いくらくらいになるか聞いた。「ここからかなり離れてるから20ポンドだな」と運転手は言った。今思えばかなりの値段なのだけれど、あの頃のわたしはお金があったのか、世間知らずだったのか、そのタクシーに乗り込んだ。
タクシーはあっという間に繁華街を通り抜けた。道路の車線は次第に増え、建物の数は次第に減っていった。日も暮れ、窓の外はみるみる暗くなっていった。わたしは途端に不安になった。「このまま現金を奪われて、どこか空き地に捨てられるんじゃないだろうか」運転手を疑いたくなるほど、心細い景色だったのだ。おまけに彼は運転しながらスマートフォンの画面をスクロールし、Facebookを見ていた。わたしは電話をかけている“ふり”をしたり、彼に話しかけてみたり、自分には隙がないのだということを見せつけようとした。
しばらくして彼は「道に迷った」と言い出した。いよいよ命の危険を覚悟したわたしは、B&Bの電話番号を伝え、彼に電話をかけるように頼んだ。オーナーの女性が曲がり角に立っていてくれるということになった。タクシーはゆっくりと住宅地の中を進んでいった。しばらくして、懐中電灯を持った女性が大きく手を振るのが見えた。
B&Bはまるでローラ・アシュレイのお店のようだった。淡いブルーの壁紙に、小花柄のシーツがかけられたダブルベッド、出窓にはカゴいっぱいのフルーツと、ポットにはいった紅茶。「このフルーツ食べていいの?」と聞くと「もちろん。全てあなたのために用意したもの。」と彼女はいった。インテリアの雰囲気とは違い、スキニージーンズに濃いアイラインが似合うとてもかっこいい女性だった。彼女の名前はジルといった。
翌朝、朝食をとりにダイニングルームへ向かうと、すでにシンガポール人の家族が座っていた。ガラス戸から日がいっぱい入る開放的なダイニングルームで、とびっきり美味しいイングリッシュ ブレックファーストを食べた。わたしは後にも先にも、あれほど美味しいイングリッシュ ブレックファーストに出会ったことはない。
イングリッシュ ブレックファースト
その日の夜、宿へ戻るとパンクロックが3階から流れていた。2階にある部屋に入ろうとすると、上の階から同い年くらいの男の子がおりてきた。彼は「母さんは誕生日会で出かけてるから、何かあったら僕に言って。何か飲みものいる?」と言って、紅茶と、ホットミルクの入ったポットを持ってきてくれた。
わたしの泊まった部屋その2
次の日、朝食をとりにダイニングルームへ向かうと、ジルが嬉しそうに棚の上にバースデーカードを並べていた。大きなオードリーヘップバーンの肖像画がかけられたリビングルームで。「今日はわたしの誕生日なの」と彼女は大きな笑みを浮かべた。朝食の後、チェックアウトまでわたしはジルといろんなことを話した。その日はもうシンガポール人の家族はいなかった。今でも覚えている、とても大切な言葉をジルはわたしにくれた。
正直、オックスフォードで何をしたのかよく覚えていない。だけれど、宿のことは鮮明に覚えている。彼女の人柄がにじみ出た、とっても素敵な宿だった。オックスフォードでしたいことは特にないのだけれど、とびっきり美味しい朝食を食べに、またオックスフォードへ行きたいなと思っている。
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ジルのB&Bはこちら。わたしはバスを知らなかったのでタクシーで向かったけれど、バス一本で中心地に行けるのでアクセスも問題ないです。バスなら確か2ポンドしなかったはず。
👉明日のブログはイタリアでの宿について。話題のair B&Bの感想とともにお送りします。
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